第 18 号
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日本実験動物技術者協会九州支部と
九州実験動物研究会の共同開催による研究発表会を振り返って
鹿児島大学医学部附属動物実験施設 上村亮三

 爽やかな晩秋の青空の下,日本実験動物技術者協会九州支部(中村豊支部長,以下実技協と略す)第15回研究発表会及び第13回九州実験動物研究会(半田純雄会長,以下研究会と略す)が,平成7年11月25日(土),26日(日)の両日にわたり,鹿児島大学稲盛会館にて共同開催の形で行われた。九州地区における実験動物を扱うスペシャリストの集団である両会の会員皆が,それぞれの職場・研究所等で日頃から取り組んでいる研究内容を同じ場で発表し合うことは会員の技術向上や動物実験の発展に大きく貢献するものであり,同時に,会場は1年ぶりに懐かしい仲間が一同に会する貴重な場ともなる。前回の佐賀医科大学に引き続き,今回は鹿児島大学がお世話することになった。会場はJR西鹿児島駅から近い鹿児島大学郡元キャンパス内にある稲盛会館に決定した。稲盛会館は本学工学部出身の京セラ会長である稲盛氏が母校に寄付した多目的ホールである。完成して1年足らずのこの会館は,外観は極めてユニークで,メインホールは卵型をしており,音響効果は抜群で共同開催の学術集会には最適の会場と考えた。今回の研究発表会も内容が豊富で,初日の研究会と2日目の実技協九州支部研究発表会いずれも日頃の研究の充実ぶりを見事に表現したものであった。プログラム内容を下に記す。

11月25日(土)
第13回九州実験動物研究会
○一般演題 19題
○特別講演 I 
「遺伝子組み換え動物とこれから先のこと:工学部の研究室にて想う」
 杉村和久(鹿児島大学工学部分子生物工学)
○特別講演 II 
「鹿児島大学医学部で開発された疾患モデル動物Wolman病ラット」
 吉田浩己(鹿児島大学医学部病理学第一)

11月26日(日) 日本実験動物技術者協会 九州支部第15回研究発表会
○一般演題 18題
○特別講演 I
「動物実験施設における実験動物技術者の役割」
 小山内 努(北海道大学医学部附属動物実験施設)
○特別講演 II 
「動物園における飼育技術者の役割」
 上敷領 隆(鹿児島市平川動物公園)

 初日の特別講演 I は,鹿児島大学工学部杉村教授にお願いした。杉村先生は医学部ご出身で,免疫学,分子生物学を専門にされておられる。動物実験に全く縁の無かった工学部で研究室を旗揚げした時のご苦労,将来への不安,そして大きな夢と,我々と立場や環境は違っても同じ最終目的に向かって,日々奮闘されておられる先生の日頃の研究を垣間みる機会を与えて頂いた貴重な講演であった。
 特別講演 II は,鹿児島大学医学部吉田教授のお話であった。先生は病理学をご専門にされておられるが,本動物実験施設長でもあられる。先生が中心となって開発され,繁殖・維持している“Wolman病ラット”について,病理・生化学的特徴や繁殖の困難さ,また本ラットを用いた動脈硬化症の病態解明の研究など,疾患モデル動物の重要性と研究の奥深さを再認識させられた意義ある講演であった。
 2日目の特別講演 I は,北海道大学医学部附属動物実験施設主任技術官の小山内先生にお話をお願いした。その内容は,実験動物技術者の資質向上を目指してこれまで取り組んでこられた発生工学(胚操作)技術の習得及びその波及効果についてであった。この努力によって従来以上に研究者とのコミュニケーションが図れたこと,技術者自身の意欲が高まり地位向上に役立ったことなど,今後の技術者の1つの方向を示唆する極めて有用なお話であった。
 特別講演 II は,鹿児島市平川動物公園で獣医師としてご活躍されている上敷領先生のお話であった。動物園の現場で働いておられる先生には,飼育されている動物への愛情について,また病気を見つけるのは飼育技術者であるということ,更には普段からどれだけ真剣によく動物を観察することが重要であるかということについて熱心にお話して頂いた。
 また,会員の親睦を深める機会となる懇親会は,両会合同の形で初日終了後,市内のホテルで開かれた。出席者は両会員,賛助会員,特別講演をして頂いた先生方,その他九州地区以外からも総勢80名以上におよび,ある者は初対面の人と歓談し,またある者は旧交を暖め合ったりと,とても楽しい一時を過ごした。
 参加者は1日目108名,2日目86名と前年度(佐賀)より若干少なかったものの,鹿児島という地理的条件を考慮すれば予想以上の参加者数と言える。
 最後に,両会の共同開催による学術集会が今後も積極的に行われることを願っている。そうすることが九州地区の実験動物領域の発展に相乗的な効果を及ぼすものと考えるからである。両会が益々発展し再び共同で学術集会を開催する,その日を楽しみにこれからも精進して行きたい。