第 6 号
5
p
-- 現場における生物統計学入門 --
標準偏差と標準誤差の違いは?  (3)
東洋醸造株式会社医薬品研究所 松本一彦

間題4.あなたが薬理試験担当者だったら次の問題をどう考えますか?
 新規カルシュウム拮抗剤(YG90)の薬効をニカルジピンと比較した。検定は対照群との間でDunnettの多重比較検定を行い次のような結果を得た。すなわち,1回目の実験で対照群と高投与量群が有意となり,確認実験を行ったところ,有意差がみられなくなった。そこで,3度目の実験を行ったところ,今度は再び有意となった。3度目の正直としてこれを採用して良いだろうか?


解答:
 このような時は,何はともあれデータをグラフにして,何が起こっているか感覚的に確認すべきである(図4-1)。データをみると3回とも用量の増加に伴って値が下がっている。大筋において3回の実験は傾向が同じである。それにもかかわらず,統計的検定の結果が違ったのは何故だろう?
 平均値の検定とは群間の平均値の差を誤差的なバラツキと比較することである。ここでは平均において同じ傾向があるのに,2回目だけその差が有意でないのは平均の下がり具合いが小さくなったか,バラツキが大きくなったのかどちらかである。実際には1回目から2,3回目まで分散がだんだん小さくなっている。だからバラツキが大きくなったわけではない。バラツキが小さくなると同時に平均の差も小さくなっている。
 このような場合はしばしば3回目の実験の方が信用できそうであるが,そうすることに一抹の不安も感じる。ここでは3回の実験をまとめて,データ解析するべきであろう。その方法には2元配置分散分析が適当である。表4-1に示したように,薬剤効果ありという結論になった。



 

次項に続く--->