第 6 号
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-- 現場における生物統計学入門 --
標準偏差と標準誤差の違いは?  (4)
東洋醸造株式会社医薬品研究所 松本一彦

問題5.あなたが病理担当者で従来の主観的なみかたから客観的な評価の方法をとりいれたいと考えていたとして,次のデータをどう処理しますか?
 消炎鎮痛剤YOKAの慢性毒性試験において腎の病理組織検査で次のような結果が得られた。本剤には尿細管拡張があるといえるだろうか?

解答:
 本例題のようなデータは分類度数データと呼ぷ。このようなデータは病理組織検査だけではなく,尿検査や薬効・臨床試験においても見られる。このような時に処理の影響を評価するには,累積カイ二乗かウイルコクソンの順位和検定がよい。ここでは累積カイ二乗で検定した結果を記載する。検定統計量を計算するために,4分類を累積して3個の2×2分割表にまとめると,表5-1のようになる。
累積Iから皿のカイ二乗統計量を計算すると
これらを合成した検定計量は次の値になる。
棄却限界値をカイ二乗近似で求めるための自由度と,近似の係数dは次のようになる。
有意水準を5%にすると,累積カイ二乗検定の限界値は,数表における小数自由度のあるカイ二乗分布表より次のようになる。

12.16 > 8.84 だから検定結果は有意である。

 病理組織検査データのような順序のあるカテゴリーデータの場合は普通のカイ二乗検定ではなく,本法がすすめられる。

 以上,5例の問題について概説したがこれは実験担当者が抱えている問題のほんの一部にすぎない。今後,現実に直面している様々な問題を掘り起こして,具体的な解決方法を統計学者と共に考えていきたい。医薬安全性研究会(事務局;サイエンティスト社)は厚生省と製薬企業ならびに毒性・薬効評価を実施している研究所,大学などさまざまな分野から生物統計を考える研究者の集会であり,年4回の会合をもっている。ここに,紹介した例はこの研究会で出版した“吉村 功 編著:毒性・薬効データの統計解析(サイエンティスト社)”に記載されているものから引用している。