第 6 号
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-- 話題 --
がん破壌の新物質合成細胞識別し反応
副作用なし一動物実験で確認
 

 ハッカ油精製の東洋薄荷工業(岡山県浅口郡里庄町)と京都大,旭川医科大などの研究グループは,レーザーなど外部エネルギーを使わずにがん細胞だけに反応し,がん組織を局部的に破壊する新物質の合成に成功した。この新物質を静脈注射すると,がん組織が出血壊死(えし)することを動物実験で確認,関係者は「新タイプの制がん剤へ」と期待している。同グループは,この研究成果を23日から名古屋市で開かれる第48回日本癌学会総会で発表する。
 新物質の合成に成功したのは,東洋薄荷工業と京都大農学部,旭川医科大手術部,北海道大応用電気研究所の研究グループ。同グループはここ数年,がん組織に対する血液製剤や診断薬の研究・開発に取り組んでいる。
 新物質は,牛の血液中のヘモグロビンから精製したプロトポルフィリンにマンガン,アスパラギン酸,アルコール類を化合した金属ポルフィリンアミノ酸誘導体と呼ばれる粉末結晶体。
 この新物質を,がん細胞のあるハムスターに静脈注射したところ,24時間後に10匹のサンプルすべてでがん組織が出血壊死したことを確認。併せて肝臓や肺臓,じん臓など他の臓器への副作用もなくがん細胞を識別する選択性が強いことも分かった。またレーザーを使ったがんの光化学治療に用いられている従来のポルフィリン誘導体(HPD)が持つ光毒性を低減。がん細胞の増殖性の面では,静脈注射後30日を経てもがん組織に広がりがないことも判明した。
 現在,光化学治療に用いられているHPDは,がん細胞に対する選択性が十分でないことに加え,光毒性を持つことから使用した患者の中には2,3週間から 1カ月間程度,暗所にとどまらなくてはならないケースが出ることなどが欠点とされている。さらに,がん細胞の成長をストッブさせる従来の制がん剤は人体への毒性も併せ持ち,白血球の減少や心臓への悪影響などの副作用が指摘されている。
 このため,同研究グループは200種に及ぷ新しいポルフィリン誘導体の合成を繰り返し,これらのマイナス点を克服した新物質を開発した。研究グループの中島進旭川医科大助教授は「今後のがんに対する薬剤療法分野のモデルケースになる」と話している。
 同グループでは,東洋薄荷工業で合成,旭川医科大で動物実験を重ねるとともに今後,製薬メーカーとタイアップして前臨床試験を実施。治験藥としての可能性を追求し,制がん剤として厚生省の認可を目指す。

(1989年10月21日 山陽新聞抜枠)