第 6 号
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-- 話題 --
天才サル4カ所の錠,白分で開けて逃走
犬山市の京大霊長研
 

 言語訓練を受け,図形文字を使って名前を綴(つづ)れるサルとして国際的に知られている京大霊長類研究所(愛知県犬山市)のチンパンジー2匹が,オランウータン1匹とともに3日午後,逃走した。チンパンジーは4カ所の錠を自分で開けたようだ。逃げた3匹のうち,2匹は所内で保護されたが,チンパンジー1 匹は森の中に逃走。途中,子どもをかんでけがをさせ,捜索隊の手から何度も逃れたが,4日午後3時半ごろ,約24時間ぷりに捕まった。
 逃げたのは,チンパンジーの「アイ」(メス,13歳)と,「アキラ」(オス,同),オランウータンの「ドゥドゥ」(オス,7歳)。アイとドゥドゥは約30分後に所内で保護されたが,アキラが逃走した。
 同研究所によると,サルのおりのある棟には,チンパンジーが入っていた個室,オランウータンの個室,さらに棟自体など4カ所に錠をかけていたという。逃げたアイを最初に発見したとき,この棟のものとみられるキーを口にくわえていた。また,棟内に錠が落ちている状況から,何らかの手段で,おりのキーを入手したチンパンジーが,自力で4カ所の錠を開けて逃げ出したらしい。キーは通常,研究員らが持っていたり,入り口の上にかけてある。
 逃走後,アキラは,所内で遊んでいた小学2年生の男子を追いかけ,右わき腹にかみついて10日間のけがを負わせた。同研究所は,犬山署や,名古屋市東山動物園などに協力を要請し獣医や飼育担当者も捜索に加わった。逃げ込んだと思われる約1km東の森を中心に,囲い込み作戦を展開。アキラは深いやぶの中を逃げ回って難航したが,麻酔銃で「御用」となった。
 チンバンジーに図形文字を教えている同研究所心理研究部門の松沢啓郎助教授は「チンパンジーはビンのふたを開けたりできるし,自分で錠をあけて逃げることは十分推測できる」と話している。
「アイ」自分の名も綴れる
「アイ」は,単に名前を覚えるだけでなく,そのものの名前を「綴れるサル」として国際的にも有名。昨年秋にオーストラリアで開かれた国際心理学会でも,同研究所の松沢肋教投が,アイを使った研究を発表して注目された。10年ぼど前から言語訓練を受け,テレビ画面とキーボードを使って靴,手袋など様々な物体と,それを表示する図形文字を識別でき,さらに5本の赤鉛筆を「赤」「鉛筆」「5」と表示するまでになった。
 11種類の色の名前も漢字で記憶。目,耳,鼻も示せる。
 またアキラも10年ほど前からアイといっしょに図形文字を使っての言語訓練を受けている。

(1989年10月5日 朝日新聞)