第 6 号
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-- 話題 --
「アイ」30秒で錠開けさる 
やはり"脱走"の主犯? 京犬霊長研実証テスト
 

 愛知県犬山市の京大霊長類研究所で昨年10月,三重にカギのかかったサル居室棟から,人工言語を学習しているチンパンジー「アイ」(雌,13歳)など3 匹が逃げ出す事件があったが,アイが別のチンパンジーよりも錠を開ける能力が高いことが,同研究所の実験で明らかになった。カギと錠を持たせての単純な実験だが,アイは30秒たらずで錠を開けた。
 実験は「脱走」事件後の昨年10月末から12月にかけて,アイの研究に当たっている松沢啓郎助教授(39)が試みた。実験対象はアイと,クロエ(雌,9歳),パン(雌,6歳)の3匹。使ったのは,おりと同じだが,小型で,

1. 錠を最初に渡した後,カギを渡す
2. カギを渡した後,錠を渡す
3. 錠を鉄棒につるして閉め,カギを渡すの3つの実験を行った。

 アイは最初に錠を受け取った段階では,興味を示さなかったが,カギを渡されると,30秒たらずで開けた。残り2つの実験でも,やはり30秒かからずに錠を開け,何回も開け閉めを繰り返した。リンゴやバナナのほうびはなかったが,カギの操作を楽しんでいる様子だったという。同助教授はその模様をビデオカメラで録画した。
 クロエの場合は,カギを錠に差し込みはするものの,「ひねる」ことを知らず,1度も開けられなかった。バンは,錠にカギを入れることさえ出来ず,すぐにやめてしまったという。
 松沢助教授は,「チンバンジーならすぺて,カギを開けられるわけではなさそう。成長すれば出来るのか,経験で出来るのかまだよく分からない。さらにさまざまな実験で研究をしてみたい」と,実験を単なる「カギ開け実験」ではなく,研究課題であることを強調している。
 サル脱走事件の対策本部(本部長・竹中修同研究所教授)では,「この結果を,所員の共通認識として役立てているが,カギを開けられることが,錠を開けて逃げたことにはならない」といい,脱走のナゾは依然,解明されていない。

(1990年1月28日 朝日新聞)